まだ何もしていない

ネトゲジプシー漂流記

悪魔は囁く

僕はネットゲーマーだ。
昔々、アスガルドというタイトルに手を出してから早十数年、今や立派なネトゲジプシーである。
ネトゲという狭くも広い世界で、いろんな人を見てきたし
今も見ている。
 
ネットゲームは面白い。
狭い世界で人間関係が限界まで凝縮されていると思う。特に色恋沙汰の点で。
今も昔も、愛を動力に様々ないざこざを起こす人々がいて、対岸の火事をよく目にした。
自分に極近しい友人たち、俗にいう身内以外はどうなってもいいと思っている僕は、
その火を見るたびにもっと燃えろと思っていた。
 
極めて性格の悪いそんな僕でも、普段は人畜無害ないちプレイヤーである。
たとえ中の人間が、誰かメンヘラか脳内お花畑でもひっかけて修羅場かマルチバッドエンディングにならないかな、とか思っていてもだ。
猫の皮の下をさらけ出してしまうと、ネトゲ内と言えども生き抜くのは難しい。
晒しスレにテンプレ化されて野良を歩けない身体になる。
 
それでも
相方だのゲーム内結婚だの煩い彼ら彼女らが何を考えているか知りたい
どう思う?どう反応する?どう行動する?オンライン上とはいえ、縋っているその絆が切れたら?
 
僕の好奇心は捻じれて歪み、今猫の皮を被りながら、甘言を流し込んで対岸の火種に火をくべている。
 
そんなんだから、僕と長い付き合いで、僕本来の性格を知っている友人たちは、
僕の手の届きそうな範囲内で、少しでも火花が散ったり、ボヤが起きると口をそろえてこう言ってくる。
 
「お前、何かしたか?」